大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成元年(特わ)92号 判決 1989年7月19日

本籍

東京都千代田区三番町六番地五

住居

東京都新宿区南町二八番地二

会社役員

岡野或男

昭和一四年三月一〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年二月及び罰金三二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、株式会社北沢バルブ顧問、財団法人北沢美術館理事及び株式会社紅や代表取締役であるかたわら、営利の目的で継続的に有価証券売買を行っていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、有価証券売買を被告人名義の外他人名義で行う等の方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五九年分の実際総所得金額が四〇七六万四三五七円あった(別紙1修正損益計算書参照)にもかからず、昭和六〇年三月四日、東京都新宿区三栄町二四番地所在の所轄四谷税務署において、同税務署長に対し、昭和五九年分の総所得金額が一〇九七万六一一二円であり、これに対する所得税額は既に源泉徴収された税額を控除すると二八万八九五〇円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書(平成元年押第三八〇号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の合算対象世帯員の資産所得の合算後の主たる所得者のあん分税額から源泉徴収税額を控除した正規の所得税額一五二三万五六〇〇円と右申告税額との差額一五五二万四五〇〇円(別紙2脱税額計算書、資産所得あん分税額計算書参照)を免れ

第二  昭和六〇年分の実際総所得金額が一億〇三九六万四二〇五円あった(別紙3修正損益計算書参照)にもかかわらず、昭和六一年三月六日、前記四谷税務署において、同税務署長に対し、昭和六〇年分の総所得金額が一二一八万四〇〇〇円であり、これに対する所得税額は既に源泉徴収された税額を控除すると七万二一五〇円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書(平成元年押第三八〇号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の合算対象世帯員の資産所得の合算後の主たる所得者のあん分税額から源泉徴収税額を控除した正規の所得税額五六六二万八二〇〇円と右申告税額との差額五六七〇万〇三〇〇円(別紙4脱税額計算書、資産所得あん分税額計算書参照)を免れ

第三  昭和六一年分の実際総所得金額が九三一六万七二〇八円あった(別紙5修正損益計算書参照)にもかかわらず、昭和六二年二月二三日、前記四谷税務署において、同税務署長に対し、昭和六一年分の総所得金額が一〇九四万五〇〇〇円であり、これに対する所得税額は既に源泉徴収された税額を控除すると六一万八七〇〇円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書(平成元年押第三八〇号の5)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の合算対象世帯員の資産所得の合算後の主たる所得者のあん分税額から源泉徴収税額を控除した正規の所得税額四八五三万四四〇〇円と右申告税額との差額四九一五万三一〇〇円(別紙6脱税額計算書、資産所得あん分税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通

一  高橋信夫、郷武の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏作成の有価証券売買、株式売買回数及び株式売買株数、雑費、配当収入、利子収入、源泉税の調査書

判示第一の事実につき

一  押収してある昭和五九年分の被告人の確定申告書等一袋(平成元年押第三八〇号の1)、岡野久子の確定申告書等一袋(同号の2)

判示第二の事実につき

一  押収してある昭和六〇年分の被告人の確定申告書等一袋(平成元年押第三八〇号の3)、岡野久子の確定申告書等一袋(同号の4)

判示第三の事実につき

一  押収してある昭和六一年分の被告人の確定申告書等一袋(平成元年押第三八〇号の5)、岡野久子の確定申告書等一袋(同号の6)

(法令の適用)

罰条 各所得税法二三八条一項、二項

刑種の選択 各懲役刑と罰金刑の併科

併合加重 刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項

労役場留置 刑法一八条

執行猶予 刑法二五条一項(懲役刑につき)

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 懲役一年二月及び罰金四〇〇〇万円)

(裁判官 柴田秀樹)

別紙1

修正損益計算書

岡野或男

自 昭和59年1月1日

至 昭和59年12月31日

<省略>

別紙2

脱税額計算書

昭和59年分 岡野或男

<省略>

資産所得あん分税額計算書

昭和59年分 岡野或男

<省略>

別紙3

修正損益計算書

岡野或男

自 昭和60年1月1日

至 昭和60年12月31日

<省略>

別紙4

脱税額計算書

昭和60年分 岡野或男

<省略>

資産所得あん分税額計算書

昭和60年分 岡野或男

<省略>

別紙5

修正損益計算書

岡野或男

自 昭和61年1月1日

至 昭和61年12月31日

<省略>

別紙6

脱税額計算書

昭和61年分 岡野或男

<省略>

資産所得あん分税額計算書

昭和61年分 岡野或男

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例